AIツールのおかげで、クリエイティブ制作はずっと身近になりました。簡単な言葉でシーンを説明すれば、数分で動く映像が返ってきます。けれども、それを本物のマーケティング動画に仕上げること——フォーマットに合い、ブランドに沿い、伝えたいことを伝える動画にすること——は、必ずしもプロンプト1回で済む作業ではありません。
これはPandAi7の実際の制作事例です。私たちはAIツールでPandAi7の短い広告動画を作ることにし、その過程を記録しました。
この記事で扱う内容:
- 試したこと
- うまくいったこと
- 失敗したこと
- Veoで遭遇した予想外の挙動
- 何度も繰り返した試行錯誤
- 最後にやはり必要だった人の手による編集
- この経験から学んだ、AIの実践的な使い方
広告づくりにAIを使うことにした理由
PandAi7は小さなチームで開発しているプロダクトで、世界中のユーザーに向けて作っています。多くのスモールビジネスと同じく、制作スタジオもアニメーションチームも、大きなマーケティング予算もありません。
また、私たちはAIを使うプロダクトを作っているので、反対側の立場からもAIを体験してみたいと考えました。つまり、本物の目的と締め切りを持って、自分たちのマーケティング業務の中でAIを使うユーザーとしてです。
目標はシンプルでした。PandAi7のレッサーパンダが登場する、短いアニメーション広告です。そのアイデアを、Googleの動画生成モデルであるVeo向けの構造化されたプロンプトに落とし込むために、Geminiを使いました。
これは科学的な実験ではありません。小さなチームによる一つの制作であり、ここに書くのは実際に見たことです。
実際に使ったAIツール
使ったツールは3つで、それぞれ別の工程を担いました。
- Gemini — プロンプトの作成、構成、改善、トラブルシューティングに使用。
- Veo — アニメーション動画そのものの生成に使用。
- Canva — 使える生成結果が得られた後、ナレーションと字幕の調整に使用。
一つのツールですべてをこなせたわけではありません。流れは、コンセプト、Geminiでのプロンプト作成、Veoでの生成、評価、繰り返し、Canvaでの編集、そして完成動画、というものでした。
アイデアを動画プロンプトに変えるまで
出発点は台本ではなく、アイデアといくつかのビジュアル参考資料でした。動画モデルに狙ったものを作らせるには、アイデアを正確な説明に変える必要があります。そこでGeminiに手伝ってもらいました。
最終的にプロンプトに含めたのは:
- レッサーパンダのキャラクターとその特徴
- ビジュアルスタイル(3Dアニメーション)
- キャラクターの服装——パーカー、ジーンズ、スニーカー——と、それを最後まで変えないこと
- PandAi7のブランドとロゴ
- 9:16の縦型フォーマット
- シーンごとの内容
- カメラとフレーミング
- 字幕
- 環境音と声
- 全体のビジュアルの方向性

スクリーンショットは、私たちがGeminiに送った依頼です。参考画像とPandAi7のロゴを添付し、動画に入れる内容を説明したうえで、変えてはいけないもの——キャラクターの目の色、服装、靴——を挙げました。Geminiは英語で書かれた構造化プロンプトを返してくれました(Veoでは英語のプロンプトの方が良い結果になりやすい、との提案付きです)。シーンごとに分かれていて、各パートの字幕テキスト、声、音声のスタイルまで指定されていました。
ここはAIがはっきり役に立った部分です。Geminiは、ぼんやりしたアイデアを詳細で整理されたプロンプトにまとめるのが得意で、自分たちで書くよりずっと速くできました。指示を出すAIツールなら何でも、同じコツが当てはまります。具体的に書く、一度に一つのことを伝える、やり直すより微調整する。こうしたコツはPandAi7のAIエディターガイドでも紹介しています。
GeminiからVeoへ:本当の問題はここから始まった
詳細なプロンプトがあっても、予測どおりの結果になる保証はありませんでした。本当の作業はここから始まりました。
目に見える問題の一つはアスペクト比です。私たちは9:16の縦型動画を作っていたのに、Veoは16:9の横長レイアウト向けのストーリーボードの挙動を持ち込みました。シーンが縦長の画面向けに構成されるのではなく、横長のコマが縦型キャンバスの中に積み重なった形で返ってきたのです。
技術的な細かい話に聞こえるかもしれませんが、広告ではこれがすべてを左右します。
- アスペクト比は構図を決めます——キャラクターの立ち位置、動きに使える空間、最初に目が行く場所。
- フレーミングはブランド要素を置ける場所を決めます。横長の画面に収まるロゴや字幕も、縦長の画面では切れたり窮屈になったりします。
- 縦型と横型の構図は入れ替えがききません。一方向けに設計したシーンを、もう一方に単純に切り抜くことはできません。
- つまり、生成された動画が単体では良さそうに見えても、本来のフォーマットには合わないことがあるのです。

スクリーンショットは、縦型の制作フローの中でVeoが生成を準備している画面です。プレビューは横長のストーリーボードのコマを縦に積み重ねたものになっていました。そのうえでVeoは、この内容で生成を承認するかどうかを尋ねてきました。
AIは頼んでいないところまで変えてしまうことがある
特にもどかしかったのは、誰も頼んでいない変更が起きたときでした。一か所の調整を頼むと、Veoはまったく触れていない別の部分まで変えてしまうのです。
今回の制作での例を二つ挙げます。
- カメラの距離。頼んでいないのに、以前のバージョンよりカメラがレッサーパンダに近づいたり離れたりしました。
- 視線の向き。バージョンが変わるたびに、レッサーパンダの目が別の方向を見るようになりました。
広告では、こうした細部が重要です。構図、視聴者の注意が向かう先、キャラクターの視線の向き、シーン間のつながりが、短い動画をわかりやすくしています。キャラクターが急に別の方向を見れば、視聴者の目もそちらに引っ張られます。
プロンプトは生成モデルへの指示であって、すべての視覚的な指示がそのとおりに守られる保証ではありません。

スクリーンショットの矢印は、フレーミングとパンダの視線が変わったバージョンを示しています。右側のパネルでは、Veoのアシスタントが生成を開始したこと、そしてキャラクター、服装、ロゴは全シーンで一貫させると伝えています。しかし、そのすぐ横のコマには、私たちが頼んでいない変化が表れていました。
プロンプトを増やしても、結果が予測しやすくなるとは限らない
自然な反応として、私たちはより具体的に書こうとしました。詳細を追加し、修正を書き、変えてはいけないものを正確に指定しました。
しかし、指示を足しても結果が予測しやすくなるとは限りませんでした。一つを直すと別の場所で予想外の変化が起きることがあり、修正のたびにすべてを最初から確認し直す必要がありました。
まっさらな状態からならうまくいくかもしれないと考えて、別のプロジェクトでやり直すことも試しました。それでも内容はずれていきました。同じ依頼でも、プロジェクトごとに違う解釈をされたのです。
最終的に、実際に使えたバージョンは、意図したものにおよそ70%近いものでした。この数字は今回の結果に対する私たち自身の実務的な評価であり、測定した精度ではありません。ただ、私たちがたどり着いた場所を正直に表しています。

スクリーンショットはVeoのプロジェクト一覧です。同じ広告のために、数日にわたって別々のプロジェクトを作成しました。完成したPandAi7のロゴカードで始まるものもあれば、ロゴの文字が切れて大きく表示されたものもあります。同じ指示が、毎回違う形で解釈されたことがわかります。
AIで実際に省けたこと
とはいえ、ツールが役に立たなかったわけではありません。AIのおかげで、次のことがずっと簡単になりました。
- ビジュアルのアイデアを試すこと
- 本格的に取りかかる前にシーンを試すこと
- さまざまな動きを検討すること
- さまざまなカメラの向きを試すこと
- たたき台をすばやく手に入れること
- 従来の制作リソースなしで試行錯誤すること——スタジオも、アニメーターも、撮影もなしで
私たちが強調したいのは、この違いです。AIは試してみるためのハードルを下げました。しかし、出てきた結果を評価する必要はなくなりませんでした。
最後の仕上げには、やはり人の手による編集が必要だった
Veoが使える動画を生成したところで、作業は終わりませんでした。そこから編集が始まったのです。
仕上げにはCanvaを使いました。ナレーションと字幕を調整し、最終版が私たちの伝えたいことを、伝えたい形で表現できるようにしました。
それぞれのツールが、別々の工程で役に立ちました。Geminiは構成、Veoは動きの生成、Canvaは最後の細かな編集に向いていました。どの段階でも自律的に進んだわけではなく、各ステップで何を残すかを決めたのは人間です。
実際にたどった流れ:
- コンセプト
- プロンプト
- 生成
- 評価
- 繰り返し
- 編集
- 完成
では、AIはプロンプト1回で広告を作れるのか?
安定しては作れません。
私たちの経験は、自律的な広告制作というより、AIに支援されたクリエイティブ制作にずっと近いものでした。AIは素材をすばやく作ってくれましたが、それを方向づけ、評価し、仕上げたのは人間でした。
もう一度やるなら、最初からこの流れで計画します。
- 広告の目的を決める。
- ビジュアルのコンセプトを固める。
- プロンプトを構成する。
- 生成する。
- 結果を確認する。
- 何が変わったか、何がうまくいかなかったかを見つける。
- 繰り返す。
- 使える素材を編集する。
- どこで十分とし、終わりにするかを決める。
AI動画生成について学んだこと
| 予想 | 実際 |
|---|---|
| AIならすぐに広告を生成できる | AIはたたき台をすぐに生成できたが、使える結果にするには評価と試行錯誤が必要だった |
| 詳細なプロンプトなら結果は正確になる | 詳細にしても、すべての指示が守られる保証はなかった |
| プロンプトを変えれば必ず結果は良くなる | 繰り返すうちに、新たな変化や内容のずれが生じることがあった |
| 一つのAIツールで全工程をこなせる | 工程ごとに役立つツールが違った |
AIはクリエイティブな試行を簡単にしてくれます。でも、クリエイティブな判断が不要になるわけではありません。
AI広告はスモールビジネスに役立つのか?
役立つ可能性はあります。AIは、広告やビジュアルコンテンツを試してみるハードルを下げてくれます。以前ならスタジオや代理店が必要だったアイデアを、今は小さなビジネスでも試せます。
ただし、「AIで生成できる」ことは「AIが想像どおりのものを生成してくれる」ことを意味しません。
AIを前提に計画する前に、いくつかの実務的な点を考えておく価値があります。
- 学習時間——使える結果を出せるほどツールに慣れるまで、どれくらいかかるか?
- 試行錯誤の時間——生成、確認、修正のサイクルを、現実的に何回こなせるか?
- 自動化する価値があるもの——AIが本当に速くしてくれる作業はどれで、単に別の場所に移すだけの作業はどれか?
- 判断が必要な場面——結果がブランドに合っていて、わかりやすく、正しいかは、やはり誰かが判断する必要がある。
- 有用性——完成したものは本当にビジネスの役に立つのか、それとも作ってみて面白かっただけか?
同じ現実的な見方は、AI生成コンテンツ全般にも当てはまります。素材を速く作る助けにはなりますが、ビジネスが注目と信頼を得るまでにかかる時間は変わりません。これについてはSEOについての私たちの正直な見解で書いています。
この実験で変わった、AIについての私たちの考え方
スモールビジネスは、たいてい時間もリソースも限られています。AIはクリエイティブ制作の一部の作業負担を本当に減らせます。それは身をもって確かめました。
それでも、AIをうまく使うには次のことが必要でした。
- ツールの挙動を学ぶこと
- すべての結果を評価すること
- うまくいかなかった部分を直すこと
- 何が十分かを判断すること
- 試行錯誤をやめるタイミングを見極めること
AIの価値は、あらゆる作業を消してくれることではありません。プロセスの一部を、より速く、より手の届くものにしてくれることにあります。
AIについて私たちが本当に考えていること
- AIは魔法ではありません。私たちの広告には、計画と何度もの確認、そして人の手による編集が必要でした。
- AIの恩恵を受けるために、必ずしもAIの専門家になる必要はありません。
- 大切なのは、AIが得意なことを理解することです。私たちの場合は、プロンプトを構成することと、ビジュアルのたたき台をすばやく作ることでした。
- 同じくらい大切なのは、AIが予測しにくい部分を理解することです。私たちの場合は、アスペクト比、フレーミング、そして変更を頼んでいない細部でした。
- どの作業を自動化する価値があり、どこで人の判断がまだ重要なのかは、それぞれのビジネスが決めるべきです。
よくある質問
- AIだけで広告を完成させることはできますか?
- 私たちの経験では、安定してはできません。AIは役立つ素材をすばやく作ってくれましたが、目的を決め、結果を一つずつ確認し、試行錯誤し、人の手で編集して仕上げる必要がありました。
- GeminiはAI広告動画づくりに使えますか?
- Geminiが動画そのものを生成しなくても、役に立ちます。私たちはGeminiでプロンプトを作成・構成・修正し、動画の生成にはVeoを使いました。
- プロンプトを詳しくすれば、Veoの精度は上がりますか?
- 詳しいプロンプトは役に立ちますが、すべての指示が守られる保証にはなりません。今回の制作では、詳しく書いても、頼んでいない変化が返ってくることがありました。
- なぜAI動画生成ではプロンプトを何度も変える必要があるのですか?
- 生成モデルは指示をそのまま実行するのではなく解釈するため、試すたびに結果が変わります。一つの細部を直すと別の部分が変わることもあるので、各バージョンを確認して調整する必要があります。
- スモールビジネスは自分でAI広告を学ぶ必要がありますか?
- 必ずしもそうではありません。AIが得意なことと予測しにくいことを理解したうえで、どの作業に時間をかける価値があり、どの作業は別の方法の方が良いかを判断することをおすすめします。